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20代サラリーマン 映画とか音楽とか

【映画】「駆込み女と駆出し男」を大泉洋ファンが観た結果

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駆込み女と駆出し男」を観ました。原田眞人監督作品は初。さてさて。

 

「北海道には大泉洋というバケモノがいる」

本作においても彼は屋台骨かつスーパーエースシン・ゴジラでいうところのシンゴジラ、ダラスマーベリックスでいうところのダーク・ノヴィツキー、東京03でいうところの角田晃広。オープニングからその魅力は爆発。

 

江戸の街を身軽そうに歩く信次郎(大泉洋)。その先には役人に捕らえられ、これから市中を引き回されようとする女義太夫らと大勢の野次馬。時代は老中水野、質素倹約の時代であった。信次郎は、初めは独り言のように、後半はだんだんと感情を抑えられなくなったのか、大声で役人に物申す。そして走って逃げる。

 

「人にはへちまの皮のようにおもわれようが、しいかれんぱい(?)故事来歴。何でもよりどり十九文と並べたてりゃ戯作者の本領。とはいえ役人ばかに出会いては、流しに出ずるドブネズミのごとく尻尾を巻いて逃げ出すばかり!かようの無益のことに日月を費やし候のことたわけのいたり!たわけついでにもう一言、女義太夫風儀取り締まりの次はなんだえぇ!楽しいことは全部悪いことかぁい!!!」

 

セリフの前半は特に、書き起こしてみてやっと意味が分かった。ただ初見時もセリフがリズミカルで聞き心地が良いため不快ではないし、また、意味は分からなくても「曲がったことは許せねぇ!」という信次郎の江戸っ子な人となりが伝わってきた。音楽も相まってまさかのオープニングでジーンときちまった。「探偵はバーにいる」でも思ったけど、あんたいい役もらったなぁ。これだよなぁ。

 

そのあとに出てくる満島ひかりもイイんだなぁ。姉さん喋りというのか、語尾がちょっと上がる感じ?ほんとによかった。ほんで戸田恵梨香もええ。凛としててなぁ。内山理名の女お侍さんもよかったぁ。おじょごの夫もとってもよかったなぁ。

 

本作はギャグは笑えるし、人情モノとしてもグッとくるし、恋愛要素も楽しめる。また、設定とか言葉遣いとか衣装とか細かなところにキャラクターを深く掘り下げた跡が伺え、役者の魅力もかけ合わさることでキャラクターに命を感じられたことが一番良かった。脚本は完璧とは言えないがそんなもん押し切るスピード感とおもしろさ。そして何より本格的な時代劇の空気感と、おもしろいものを作るという志の高さがあった。

 

ブルーレイ買おうかな。

MCU(マーベルシネマティックユニバース)へのラブレター

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マーベルシネマティックユニバース

11年間映画を作り続け、ついには1つのユニバースまで構築してしまった唯一無二の映画シリーズ。「インフィニティサーガ」のラストを飾る「アベンジャーズ エンドゲーム」の公開まで1ヵ月を切った。。。

 

■思えばいつでもそばにあった

小学生の時サムライミ版「スパイダーマン」を観て、スタイリッシュなウェブスイングと「親愛ある隣人」というヒーロー性に惹かれ、それ以来、アメコミ映画を観続けてきた。大学生になってからは邦訳中心ではあるがコミックスも読むようになり、何を血迷ったか「スパイダーマンの街だし、、、」という舐めきった理由から留学先にニューヨークを選択。どうやってもカントリーボーイである自分の根っこと否応なく向き合わせられる毎日を過ごしたこともあった。そんな、当たり前のようにそばにあったMCUが、壮絶に、終わる。

 

MCUの何がすごいのか

マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ氏は、MCUシリーズの「アイアンマン」~「アベンジャーズ エンドゲーム」の全22作品を「インフィニティ・サーガ」と呼んでいるとコメントしており、これは第1ウェーブであるとことを明かしている。

https://comicbook.com/marvel/2019/03/19/avengers-endgame-mcu-first-wave-infinity-saga-kevin-feige/

 

やばいっす。超大作22作品で第1ウェーブ。映画でユニバースって構築できちゃうんですねぇ。。。超長期的な構想の元、コンスタントに映画を作り、稼いで、ファンを楽しませる。ぼくがはたらくかいしゃの「中期計画」ってなんなんだろー

 

■マイディアヒーローズ

かつて、プロレスやドリフが社会現象となり、ほとんどの日本人が同時間にテレビに釘付けとなっていた時代があったらしい。現代は1人に1台のスマートフォン。映画や小説、モノの楽しみ方は十人十色。趣味嗜好も多様化し、それと同時にファンのコミュニティも縮小・多様化。エンタメから「同時性」は無くなりつつある。

 

MCUはどうだろう。全世界の観客が同時にMCUという「神話」を楽しんでいる。この時代にエンタメの「同時性」を体現する高みにあるのだ。11年もの間「エンドゲーム」に向けて物語を紡いできたMCU。どのようにアベンジャーズがアベンジするのかアッセンブルするのか、この大きすぎる期待というハードルも悠々と超えてくれる。そう確信させてくれるぼくらのヒーロー。こんなロクでもない時代に「この時代に生まれて良かった」なんて思わせてくれて本当にありがとう。ビッグリスペクト!!

 

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【映画】ブラッククランズマンを日本人が観た結果

ブラッククランズマン

ネタバレあり

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「キャプテンマーベル」「運び屋」「グリーンブック」と注目作が目白押しな今、こちらも大注目な「ブラッククランズマン」を観てきました。公開2日目ということで日比谷シャンテも大盛況。スパイクリーでアダムドライバーで、って、観るわなぁ。製作に携わっているジョーダン・ピール監督の前作、「ゲット・アウト」は大大大傑作であった。さて、本作は。。。

 

おもしろかった。

 

ま、でもアメリカの観客ではないということはスパイクリーの映画を観るということに大きく影響するなぁっちゅうことで。スパイクリーっていう人はドキュメンタリック(?)なテーマを物語に落とし込む作家性な訳で、今回も「差別や憎しみっていうのは昔の話じゃなくて今も厳然と存在してる、君はどう思うんだ」っていう作品になっていた。

 

そのテーマがいかに自分にとって「リアル」かということは映画の感じ方に大きく影響する。(当たり前)

 

例えば黒沢清クリーピー」とかって、日本の普通の住宅街が舞台で、それは自分のすぐ近くにあるもの。なんとなしに普段感じている不気味さとか怖さとか、そういうものがムンムンと立ち上がってくるところに非常な魅力を感じるわけで、日本に生まれ育った自分のリアルな心象風景と画がリンクする。

 

それ言い出したら、、、ってなるけど、本作「ブラッククランズマン」は上述の「それ言ったらおしまい論」を呼び起こす作りになってると思う。

 

前半は秀逸な潜入モノかつ人種を扱った冗談も頻発するエンタメ(実態はかなりシリアスだけど)な作り。途中に最近聞いたことあるなあってセリフが聞こえてきて、それはトランプ大統領の言葉だったりする。なるほどな、1970年代が舞台だけど最近も似たようなヤバイこと言ってる人いるよね、スパイクリー節!!とか思っていると、ラスト、実際にトランプ大統領アメリカ国内のデモの映像が流れる。かなりドメスティックなメッセージだと思った。いや、普遍的なテーマを扱っているし重要な意味を持つ映画と思う。けどやっぱここまでポリティカルだと「アメリカ国内」っていう意味合いが強い。

 

本作に対するこの感情は何なのか、、、「デトロイト」とか「それでも夜は明ける」とか同じスパイクリーだと「ドゥザライトシング」とかハードにアメリカ国内のテーマを扱っている作品でも心に響くものはある。やっぱり本作は明らかに意図的に現実の映像をラストに持ってきている、という点で他と一線を画すのだろう。まぁ観客をこういう気持ちにさせることこそスパイクリーの狙ったところなのかもしれない。かもしれないというか、そうだろうな。

 

でも正直、映画体験として言うなら「ゲットアウト」の方が脳天ぶち抜かれた。<脳のコントロールを奪われる>という設定なり映像表現が<被差別の仮想体験>として機能していた。映画を観ていて「差別」の邪悪さを心の底から感じたし、映画というフォーマットでしか描けないボーダレスなメッセージの伝達方法だった。

 

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まとまりないけど要するにスパイクリーぶちギレてるし、これが今のアメリカだねヤバイねって感じ。

映画ウォーリアーとその主題歌「about day」

ウォーリアー(2011)

※ネタばれあり

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公開当時、日本ではビデオスルーとなった本作。 

総合格闘技のトーナメントシップを舞台にした、ある兄弟とその父親のお話です。

 

「他人は割り込めない」ことってよくありますよね。傍から見てると「うまくやりゃいいのになぁ」なんて思うことでも、当事者にしか分からないいきさつや思いがあってうまくいかない。周りは当人たちの気持ちを推し量るしかない。

 

本作もそうした人間同士の確執とそこからの邂逅を描くのだが、何だか本人達もそれぞれが持つ感情について理解はしていない様子。本作はその人間の"アヤ"も含めて描き切ってしまう紛れもない傑作。

 

過去に何があったかを映像で見せることは無く、役者たちの会話・表情・身の振り方で観客に登場人物の感情や葛藤、戦う理由を想像させる。しこたま想像させ、舞台を整え、ラストの対決シーンへと持っていくのだ。文字通り「最高潮のクライマックス」をラストに持ってこれるのは、ひとえに製作陣の志の高さがあってこそだと思う。

 

ワンピースに登場する「キング・パンチ」みたいな映画っすね。だいぶ違うか。

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さて本作はウィキペディアの「ストーリー」を読んでもらえば分かる通りの「ドラ泣き」映画なのであるが、主題歌も素晴らしい。

 

www.youtube.com

 

"About Today"

Today you were far away
and I didn't ask you why
What could I say
I was far away
You just walked away
and I just watched you
What could I say

How close am I to losing you

Tonight you just close your eyes
and I just watch you
slip away

How close am I to losing you

Hey, are you awake
Yeah I'm right here
Well can I ask you about today

How close am I to losing you
How close am I to losing

 

この曲は最後の方シューゲイザー的な轟音サウンドになってそこがまさに映画のラストに持ってこられる。ただ、シューゲサウンドを感動シーンに持ってくるって、うまくやらないと「あまりにも」って感じで寒くなる気がする。

 

ただ、「about today」のシューゲイザー的なサウンドはただのギター掻きむしりじゃなく、ベースは曲前半の流れをしっかり踏襲したフレーズだったり、バイオリンが入っていたり、前半の語り掛けるような誠実な曲の印象はそのままに高まるものを表現している。そこが「ウォーリアー」のストーリーテリングのタッチと非常にマッチしている。

 

How close am I と

to losing you の対比も切ないよな。